AF-S DX NIKKOR 18-105mm f/3.5-5.6G ED VR マウント修理とカビ清掃

DXフォーマットの高倍率入門レンズ。扱いやすい画角帯でとりあえずこれ一本あればだいたいのシーンで困らないだろうと言うレンズです。発色や解像感は申し分なく、手ブレ補正もついているのでお得感のあるレンズだと思います。確かキットレンズとしても販売されていたような。

修理の面から言うと、マウントのツメ部分が樹脂製なのがかなりのウィークポイントとなっています。コスト削減のために仕方なかったのでしょうが、取り回しの際にここが折れてしまいボディに取り付けができなくなるというのがよくあるようです(正直、ニコンの黒歴史と言ってもいいくらいのものかと感じています)。

この個体も例にもれず、マウントのツメが破損しているのと、前玉から中玉にかけて少々カビが見られます。

まずはカビの清掃を先に進めていこうと思います。前玉から分解していきます。

前玉周囲の黒い部分を慎重に剥がします。これは両面テープで貼られているだけなので引っ張るだけで取れますが、力をかけすぎると伸びたり、最悪裂けてしまったりするので、なるべく均等に力がかかるようにゆっくり剥がします。

剥がすと前玉レンズユニットのフチが出てくるので、そこにあるひっかけ穴に対してカニ目レンチを使って回します。そうすると前玉ユニット群が外れます。

次にふたつめの前玉ユニット群を外します。

これにはひっかけ穴はないので、ゴムリングを押し付けて回します。

ここはあまり固くないのでゴムリングで容易に外れます。

そうすると中玉まで到達するのでそれぞれのレンズ面を清掃します。

これくらいのカビであれば跡も残さず完全に除去できます。

マニュアルフォーカス世代に比べるとコーティングが進化しているのか、カビによるコーティングダメージは受けにくいように思います。ただ、あまりないですがレンズユニット群の中に発生したカビの除去は非常に困難です。ユニット群のハウジングは溶着されているので破壊するしかありません。

カビの清掃が完了したので次にマウントの修理をします。マウント側はまず後玉レンズ周囲のフチの部分を精密ドライバーで外します。電極部分をとめるネジと、フチのパーツ自体をとめるネジの2種類があります。

その次にマウントにあるネジを外せば破損したマウントリングが外れます。

が、そのまま引っぱってはいけません。電極が伸びているのでそのまま引っぱると電極と電線のはんだ付け部分が外れてしまいます(接合はかなり弱いです)。なのでマウントリングを浮かせた状態でネジを外します。

そうするとマウントリングが完全にフリーとなるので外すことができます。

引っかけてあるバネを外し、絞りレバーのパーツを取り外して新しいパーツに移植します。

あとは逆順に組み立てれば修理は完了です。

…と言いたいところですが、別のマウントリングを使用するとマウントからレンズ面までの位置が微妙に変わり、ピントの無限遠位置が狂うことがあります。ピントがきちんとズーム全域で無限遠まで出ているか確認が必要です。

もともと金属のリング板が挟み込まれており補正されているのですが、無限遠を確認しながらこのリングを増減させて調整を行います。

無限遠よりも遠くにピントが進んでしまう場合(オーバーインフ)は枚数を増やし、無限遠までピントが進まない場合は枚数を減らします。もともと最近のレンズはオーバーインフ気味になっているのが通常なので、許容範囲になるまで調整します。

修理自体はそれほど手間ではないのですが、調整が必要な場合はかなり手間がかかります。今回は調整なしで問題なく修理が完了しました。

今回の修理には下記を使用しています。

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