AI MICRO NIKKOR 55mm F2.8S 絞り羽固着の修理

自分的に修理がいちばん楽しいレンズ

ピントリングの固着や絞り羽の油まわりなど、油関係の不具合が非常に多い。さらにダブルヘリコイドが採用されているため少々複雑な構造をしている。

一方でレンズが奥まっているため取り回しによるレンズへのキズが入りにくい構造をしていて、また中玉に貼り合わせレンズがありますがバルサム切れが起こっている個体は見たことがないです。

つまり、回復不能な不具合の確率が小さく修理しがいのあるレンズです。

複雑な構造とはいえ、順番に進めていけばさほど難しいわけではありません。使用する道具も精密ドライバーとゴムリング、ピンセットでだいたいいけます。使用する精密ドライバーは+0と+00で大丈夫です。

この個体は絞りダイヤルを動かしても絞り羽が出てこず開放のままなので、油分による絞り羽の固着が予想されます。

絞り羽の部分であればマウント側からの分解のみで修理が可能です。

マウントの3つのネジを外します。

マウントを外して、レンズユニットと外側を止めているネジを3つ外します。

ネジを外すとレンズユニットが外れますので、本体から引き抜き、

次はレンズユニットの前後を止めている3つのネジを外します。

このネジを外すとレンズユニットが前後に分かれます。

絞りの部分は後ろ側にあります。

先に絞りを閉じるためのバネを外しておきます。フック状に引っ掛けてあるだけなのでピンセットで外します。

絞りの部分と後玉部分を止めている2つのネジを外せばいよいよ絞り部分に到達するわけですが、ネジを外す前に止まっている位置をマジックでマーキングしておきます。

このネジの止めている位置には回転方向に遊びがあり、ここがずれると絞りの基準開き量が変わってしまいます。つまり、絞りリングを開放の位置にしていたとしても絞り羽が少し閉じていたり、絞りリングの位置に対して絞り量がずれることで露出や被写界深度がおかしくなる可能性があります。なのでこのマーキングは非常に大事です。

2つのネジを外すと絞り部分とレンズ部分が外れて絞り羽に到達します。

ふた部分を外すと、予想通り絞り羽に油が付着しており貼りついていました。

付着している油を一枚一枚拭き取っていきます。

拭き終わってキレイになったら元のように組みなおします。

先ほどのマーキングの位置でネジを止めます。

どんどん逆順に組みなおしていきます。

絞り羽がきちんと動くようになり修理完了です。

絞り羽部分だけだったので比較的スムーズに修理できました。だいたいの場合、絞り羽に油が付着していたらピントリングも固着していたりレンズ面に油滴が発生していたり他にも不具合があって手間がかかることが多いので、このケースはむしろ珍しいかもしれません。

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